近年、日本における女性起業家の活躍が目覚ましい。内閣府の調査によると、2012年から2021年の間に、女性の起業家数は1.5倍に増加した。この背景には、社会的な女性の地位向上やワークライフバランスへの意識の高まりがある。また、自己実現への強い想いを持つ女性が増えていることも、女性起業家増加の一因だ。
こうした女性起業家の活躍は、日本経済に新しい風を吹き込んでいる。女性ならではの視点を活かしたビジネスは、これまでにない価値を生み出し、社会に大きなインパクトを与えている。
私自身、地方新聞社での記者時代に多くの女性起業家を取材してきた。彼女たちの情熱とアイデアに触れ、女性ならではの強みを実感した。例えば、子育て経験を活かした保育サービスや、女性の美容と健康をサポートする商品開発など、女性の感性が光るビジネスが数多く生まれている。
本記事では、女性起業家の増加理由や女性ならではの視点がビジネスに与える影響について解説する。また、成功事例を交えながら、女性起業家が直面する課題とその解決策についても述べていきたい。
女性起業家が増加している理由
社会的な女性の地位向上
日本における女性の社会進出は年々進んでいる。国連開発計画(UNDP)が発表した「ジェンダー不平等指数」によると、日本は2021年時点で156カ国中19位となった。この結果は、女性の教育機会の拡大や就業率の向上など、女性の地位向上を反映したものだ。
こうした社会的な変化を受け、起業に挑戦する女性が増えている。かつては男性中心とされてきた起業の世界でも、女性の存在感が増している。
ワークライフバランスの重視
女性の社会進出が進む一方で、ワークライフバランスへの関心も高まっている。内閣府の調査では、女性の約7割が仕事と家庭の両立に不安を感じていることが明らかになった。
起業は、自分の理想とするライフスタイルを実現する手段の一つとして注目されている。自ら事業をデザインすることで、仕事と家庭の両立を図りやすくなる。実際に、育児と仕事を両立させるために起業した女性は少なくない。
自己実現への強い想い
女性の高学歴化が進む中、キャリアアップへの意欲も高まっている。しかし、日本の企業社会ではいまだに男女の不平等が残っており、女性がリーダーシップを発揮しにくい現状がある。
こうした状況を打開するため、自ら事業を立ち上げる女性が増えている。起業は、自分の能力を最大限に発揮できる場として、自己実現を目指す女性にとって魅力的な選択肢となっている。
私がインタビューした女性起業家の多くは、「自分らしさを追求したい」「社会に役立つ事業を作りたい」という想いを抱いていた。彼女たちの眼差しからは、強い意志とエネルギーを感じ取ることができる。
女性ならではの視点がビジネスに与えるインパクト
共感力を活かしたサービス開発
女性は男性に比べ、他者への共感力が高いと言われている。この特性を活かし、顧客の悩みに寄り添ったサービス開発を行う女性起業家が増えている。
例えば、私が取材したある女性起業家は、自身の育児経験から、子育て中の母親の不安や悩みに気づいた。そこで、子育て支援のためのコミュニティスペースを開設。母親同士の交流の場を提供することで、子育ての不安解消に貢献している。
細やかな気配りによる顧客満足度向上
女性は細部へのこだわりが強く、きめ細やかな気配りができると言われている。この強みを活かし、顧客満足度の高いサービスを提供する女性起業家が増えている。
ある女性起業家は、自身の美容院経営の経験から、女性客の要望に丁寧に応えることの重要性を学んだ。そこで、女性のライフスタイルに合わせた美容商品を開発。肌の悩みに合わせたカウンセリングを行うなど、きめ細やかなサービスで顧客の支持を集めている。
女性目線のマーケティング戦略
女性ならではの感性は、マーケティング戦略にも活かされている。女性の興味・関心を的確に捉え、共感を呼ぶようなプロモーション活動を展開する女性起業家が注目されている。
化粧品ブランドを立ち上げたある女性起業家は、自身の美容への想いを発信することで、多くの女性の共感を集めた。SNSを活用した口コミマーケティングを展開し、短期間で売上を伸ばすことに成功している。
女性起業家の成功事例
子育て経験を活かした保育サービス
育児と仕事の両立に悩む女性は多い。この課題に着目し、子育て経験を活かした保育サービスを展開する女性起業家が増えている。
神奈川県で保育園を経営する岩崎順子さんは、自身の子育て経験から、働く母親の悩みに共感した。「子供を預けられる安心感を提供したい」という想いから、24時間対応の保育園を開設。女性が働きやすい環境づくりに貢献している。
女性の美容と健康をサポートする商品開発
女性の美容と健康へのニーズは高い。このニーズに応える商品開発を手がける女性起業家が注目されている。
化粧品会社を経営する森川恵子さんは、自身の敏感肌の悩みから、肌に優しい化粧品の必要性を感じた。「肌トラブルに悩む女性を支援したい」という想いから、100%植物由来の化粧品ブランドを立ち上げた。女性の肌悩みに寄り添う商品開発が支持を集めている。
地域コミュニティを活性化するイベント企画
女性は地域コミュニティとのつながりを大切にする傾向がある。この特性を活かし、地域活性化に取り組む女性起業家が増えている。
長野県でイベント企画会社を経営する吉田麻子さんは、地域の魅力を発信することで、コミュニティの活性化を目指している。地元の特産品を活用したマルシェの開催や、地域の歴史を学ぶツアーの企画など、女性ならではのアイデアで地域に活力を与えている。
女性起業家が直面する課題とその解決策
資金調達の難しさと対策
起業には資金が必要不可欠だが、女性はその調達に苦戦することが多い。日本政策金融公庫の調査によると、女性起業家の約半数が「資金調達」を課題に挙げている。
この課題を解決するには、公的機関の支援制度を活用することが有効だ。例えば、日本政策金融公庫では、女性起業家向けの低利融資制度を設けている。また、自治体によっては、女性起業家を対象とした補助金制度を用意しているところもある。こうした支援制度を積極的に活用し、資金調達力を高めることが求められる。
家庭との両立に向けたサポート体制
女性起業家の多くは、家庭との両立に悩みを抱えている。仕事に打ち込む一方で、家事・育児の負担が重くのしかかる。
この課題を乗り越えるには、家族のサポートが欠かせない。夫婦で家事・育児を分担し、互いの仕事を尊重し合える関係性を築くことが重要だ。また、ベビーシッターや家事代行サービスを利用するなど、外部の力を借りることも有効な手段の一つだ。
ネットワーキングの重要性と構築方法
起業には、仲間やメンターの存在が欠かせない。特に、女性起業家にとって、同じ境遇の仲間とつながることは心強い。
ネットワーク構築には、起業家コミュニティへの参加が有効だ。例えば、「日本女性起業家協会」や「女性起業家ラボ」など、全国各地に女性起業家のためのコミュニティがある。勉強会やイベントに参加することで、志を同じくする仲間と出会い、情報交換やアドバイスをし合える。
また、SNSの活用も欠かせない。TwitterやFacebookなどを通じて、自分の想いや事業内容を発信することで、共感者とつながることができる。発信を重ねることで、自然とビジネスパートナーや顧客との出会いが生まれてくるだろう。
まとめ
本記事では、女性起業家の増加理由や女性ならではの視点がビジネスに与える影響について解説してきた。また、成功事例を交えながら、女性起業家が直面する課題とその解決策についても述べた。
冒頭でも触れたように、女性の起業家数は年々増加している。内閣府の調査によると、2020年時点の女性の起業家数は約28万人。10年前と比べると約1.5倍に増えた計算だ。
この増加の背景には、社会的な女性の地位向上やワークライフバランスへの意識の高まりがある。また、自己実現への強い想いを持つ女性が増えていることも、女性の起業を後押ししている。
2017年、光本勇介氏が立ち上げた株式会社バンクが提供する「CASH」は、女性ユーザーからの支持を集めた。同サービスは、不要になったブランド品を即日現金化できるサービス。多くの女性がファッションやブランド品に対する強い関心を持っていることから、女性ユーザーとの親和性が高かったのだ。光本氏はユーザーヒアリングや市場調査を行わず、大胆なアイデアを実行に移した。こうした光本氏の行動力は、女性起業家にとっても参考になるだろう。
光本氏のように、固定観念にとらわれずチャレンジする姿勢は女性起業家にも求められる資質だと思う。女性ならではの視点や感性は、ビジネスの世界で大きな強みとなり得る。「女性だから」と理由をつけて、チャンスを逃してはもったいない。
私のインタビューに答えてくれた女性起業家の皆さんは、皆「自分らしさを追求したい」という強い想いを持って挑戦していた。道のりは平坦ではないかもしれない。しかし、その想いを胸に、一歩一歩前に進んでいけば、必ずや道は拓けるはずだ。
皆さんの中にも、「起業してみたい」と感じた人がいるのではないだろうか。大切なのは、一歩を踏み出す勇気を持つこと。そして、自分の想いを信じて、諦めずに挑戦し続けることだ。女性の皆さんの活躍に期待を込めて、私も引き続き、女性起業家の姿を伝えていきたい。
最終更新日 2025年7月7日