従来から日本人は働きすぎ傾向があるといわれてきましたが、ここに入って新型感染症の拡大による自粛ムードや政府の働き方改革関連法の成立などの流れを受けて、労働の現場の改革に向けたさまざまな取り組みが注目を集めるようになってきています。
少なくとも労働時間の長さを労働者みずからがことさらに自慢をしたり、あるいは経営者が労働者に対して過剰な労働を押し付けたりするような風潮は、次第に淘汰されつつあるといえます。

 

重要な役割を占めている産業医

このような改革の潮流のなかでも重要な役割を占めているのが産業医であり、従来から法的にあった制度とはいっても、その内容は働き方改革関連法の成立以降はますます幅広い分野に及ぶようになり、法的な権限自体も強化されています。
産業医はその専門性を生かして労働の現場に対する必要な助言指導を行うのが役目となっており、これは労働者が健康的かつ快適な環境のもとで仕事ができるようにすることが主たる目的といえます。

それぞれの職場には製造技術や経理事務などといった、仕事のベテランはいくらでも存在していますが、ことに労働者の健康づくり、病気やけがの予防や、万が一それらのことがらがあった場合の対処などにくわしい専門家がいるわけではありません。

以上の分野は医学に精通した人物でなければ困難なはずであり、ここに産業医が必要となってくる理由があります。
実際に法律のなかでも常時50人以上の労働者がはたらいている事業場を対象として、労働者の健康管理などの業務にあたる医師を選任することが義務づけられています。

 

規模にあわせた人数を確保しなければならない

なお単に医師がひとりでもいればよいというのではなく、50人以上3000人以下の労働者を抱えている事業場であれば1名以上、さらに3001人以上の場合は2名以上といった、規模にあわせた人数を確保しなければならないことにもなっています。

ほかにも放射線を使用している施設などの特殊な場合は医師を専属で選任する必要があるなど、事業場における仕事の内容による違いなどもあります。
産業医を選任するのは事業者の役目ですが、かといって医師であれば誰でもよいというわけではありません。

労働安全衛生法施行規則とよばれる省令のなかにこまかな条件が書かれていますが、それにはたとえば厚生労働大臣が定める研修を終えた人物が挙げられます。

これらの研修は日本医師会をはじめ都道府県にある医師会などの団体で行われており、ほかにもほかにも労働衛生コンサルタント試験の合格者、大学で教鞭を執った人などの一部も同様に有資格者とみなされていて、いずれにしても産業医を選定するには専門分野における一定以上の知識経験が求められていることがわかります。

 

産業医の具体的な仕事内容

具体的な職務のなかでも会社勤務のサラリーマンにはおなじみのこととして、健康診断や面接指導といった、労働者の健康管理に関することがらが挙げられ、あわせて職場で行われている健康相談なども同様です。

これらの取り組みによって労働者の健康障害が認められた場合は、その原因を調査して再発防止措置を講じることもたいせつな職務のひとつであり、場合によっては事業者に対する勧告を行うことなども法的に定められた権限となっています。

医師といえば病気やけがの治療にあたるのが一般的なイメージですが、実際には病気やけがにならないことこそ重要であり、職場環境をチェックしてその予防にあたることが、産業医にはなによりも求められている役割といえるでしょう。
そのために定期的に職場を巡回指導することも、また時宜に応じて医学的な知識を広めて啓発したりすることもあります。

働き方改革関連法のなかではこれらの医師による面接指導や勧告といった権限も強化が図られており、あわせて事業者の情報提供の義務に定められたところです。

 

事業者に対しての勧告の権限も働き方改革関連法によって強化された

情報提供に関しては毎月の時間外勤務や休日勤務が80時間をオーバーしている労働者の氏名などの必要な情報が事業者から医師に提供されるといった内容になっており、このような義務規定を通じて医師のほうでも健康管理上の問題を抱えやすい労働者をピックアップして、面接などの指導が適宜行いやすい状況ができたといえます。

また医師から事業者に対しての勧告の権限も働き方改革関連法によって強化されたことがらのひとつで、従来であれば事業者は単なる尊重義務だけがあったものの、新しい制度のもとでは安全衛生委員会などの機関への報告や、事業者が具体的に取り組んだ措置を記録・保存しておく義務なども付加されるようになっています。

したがってこれからの時代には医師の専門的な見地からの勧告に対して、事業者側でも具体的な対応を迫られることになり、実効性が上がる結果となっています。

 

まとめ

近年では新型感染症を奇貨として、自宅におけるリモートワークや通勤の混雑を避けた時間差出勤、あるいは職場での消毒や手洗いの徹底などといった、新しいワークスタイルの確立もはじまっていますので、医学的な観点からの指導助言もこれまで以上に求められつつあります。

 

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最終更新日 2025年7月7日